
「処方箋に3種類の薬があるが、1種類だけ受け取りたい」「長期間分を一度に持ち帰らず、何回かに分けたい」と考えることがあります。ただし、患者が処方された薬を自己判断で選び、不要だと思う薬だけ外すことと、制度として認められた分割調剤は同じではありません。
処方箋は医師・歯科医師が診療に基づいて作成したものです。薬剤師は処方箋の内容に疑問がある場合、処方元へ確認し、疑問が解消してから調剤します。服用したくない薬、副作用が心配な薬、すでに手元に残っている薬があるときは、窓口で黙って受取を断るのではなく、理由と現在の状況を薬剤師へ伝えてください。
「薬を1種類だけ外す」は通常の分割調剤ではない
分割調剤は、処方された薬を日数・回数・数量などに分けて受け取る取扱いです。処方された薬のうち特定の薬を外したいという希望は、処方内容の見直しを伴うため、分割調剤とは分けて医師・薬剤師へ相談してください。
たとえば「朝夕の薬を14日分のうち7日分だけ先に受け取る」と、「3種類のうち血圧の薬だけ不要なので外す」は別の話です。後者は治療内容に関わるため、薬剤師から処方した医師・歯科医師への確認が必要になることがあります。患者の希望だけで処方内容を書き換えられるわけではありません。
服用中止や量の変更を自己判断で行わないでください。副作用が疑われる、体調が悪い、飲み忘れが多いなどの事情がある場合は、症状と薬の名前、いつからかを医師または薬剤師へ伝えます。緊急性がある症状は医療機関へ連絡してください。
制度上の分割調剤が行われる主な場合
厚生労働省の国民向け電子処方箋Q&Aでは、分割調剤の例として、長期処方された薬を家庭などで保存することが難しい場合、後発医薬品を初めて使う際に短期間試す場合、患者の服薬状況を踏まえて薬剤師の支援が必要だと医師が判断する場合を挙げています。このうち、医師が服薬支援のために分割を指示する場合は、処方箋に書かれた日数分を最大3回に分ける仕組みです。最大3回という説明を、ほかの理由によるすべての分割へ一律に当てはめるものではありません。
すべての長期処方が自動的に分割されるわけではありません。処方箋の記載、薬の性質、保存環境、患者の服薬状況などを確認して進めます。分けて受け取りたい事情があるなら、受診時に医師・歯科医師へ相談するのが基本です。すでに処方箋を受け取った後は、まず薬局へ事情を伝え、処方元への確認が必要か聞いてください。
後発医薬品を短期間試すための分割
処方箋に記載された先発医薬品を初めて後発医薬品へ変更する場合、患者の希望を踏まえて、処方日数のうち最初の一部を後発医薬品で調剤し、問題がなければ残りを続ける取扱いがあります。これは、薬の種類や処方内容を無断で変える制度ではなく、薬剤師が説明と確認を行い、必要な記録や医療機関への連絡を行うものです。
すべての薬で希望どおりに試せるとは限りません。後発医薬品の有無、供給状況、変更不可の指示、剤形や含量などによって対応が異なります。費用や次回の受取日も含め、最初の調剤時に薬局へ確認してください。
医師の分割指示がある場合
医師が服薬管理の支援が必要と判断して分割を指示する場合、分割回数や各回の日数を示した処方箋が発行されます。厚生労働省のQ&Aでは、医師の指示による分割調剤は紙の処方箋になる場合として案内されています。電子処方箋を希望していても紙が交付されることがあるため、医療機関の説明と処方箋の記載を確認します。
2回目以降も、服薬状況、残っている薬、体調変化などを薬剤師が確認します。受取日を忘れないよう、次回予定日、利用する薬局、持参する処方箋や記録を初回時に確認してください。体調が変わった場合は、予定日まで待たず薬局や処方元へ相談します。
在庫不足による後日受取とは区別する
薬局に一部の薬の在庫がなく、用意できた分を先に受け取り、残りを取り寄せ後に受け取る場合があります。これは、患者の希望や医師の指示で計画的に日数を分けるケースとは事情が異なります。どの薬を何日分受け取ったか、残りはいつ・どこで受け取るか、費用の扱い、薬局からの連絡方法を確認してください。
処方箋が調剤済みになっていない場合、薬剤師が必要事項を記入して処方箋を返却し、残りを別の薬局で調剤できる取扱いもあります。ただし、電子処方箋の継続調剤では、原則として同じ薬局で対応し、別の薬局へ移る場合は、最初の薬局が保持している処方情報を管理サービスへ戻すなどの調整が必要です。自己判断で別の薬局へ行く前に、最初の薬局へ連絡します。
リフィル処方箋との違い
分割調剤は、1枚の処方箋に書かれた総日数分を複数回に分けて調剤する仕組みです。リフィル処方箋は、医師が認めた範囲で同じ処方箋を一定期間内に繰り返し使用する仕組みです。利用条件、次回調剤予定日、処方箋の保管・返却方法が異なるため、処方箋の「リフィル可」欄や分割指示の有無を確認します。
どちらの仕組みでも、薬剤師が服薬状況や体調を確認し、受診が必要と判断する場合があります。「受診せずにいつでも同じ薬を受け取れる仕組み」ではありません。
薬局へ相談するときに伝えること
- 一部だけ、または複数回に分けたい理由
- 手元に残っている薬の名前、数量、使用期限、保管状態
- 現在飲んでいる薬、市販薬、サプリメント
- 副作用と思われる症状や服用後の体調変化
- 自宅で薬を保存しにくい事情
- 後発医薬品を初めて試したい希望
- 次回受取に来られる日と利用予定の薬局
「費用を抑えたい」「薬が余っている」「持ち帰りが難しい」など、理由をそのまま伝えると確認が進みやすくなります。処方元への問い合わせが必要な場合は時間がかかるため、閉局直前を避けて相談してください。
費用と次回受取の予定も初回に確認する
分割調剤では、初回だけでなく2回目以降にも薬剤師が服薬状況や体調を確認します。会計が各回でどのようになるか、次回は同じ薬局へ行くのか、処方箋を患者が保管するのか薬局が保管するのかは、分割の理由や処方箋の形式によって異なります。初回の窓口で、次回調剤予定日、持ち物、連絡先、費用の見込みを確認し、案内を書面やアプリに残しておくと安心です。
予定日に行けない、薬が予定より早くなくなりそう、飲み残しが増えた、体調が変わった場合は、残りを自己調整せず事前に薬局へ連絡します。処方箋の使用期間や各回の調剤可能期間が関係するため、受取日を一方的に変更せず、いつ受け取れるかを確認してください。
公式情報
- 厚生労働省「国民の皆さま向け 電子処方せんQ&A」
- 厚生労働省「処方せんの電子化について」資料3(2008年・検討資料(案)、当時の紙処方箋運用の参考)
- 厚生労働省「保険薬局の分割調剤及び調剤録の取扱いについて」
- 厚生労働省「電子処方箋管理サービスの運用について」の改正
公式情報確認日:2026年10月1日。個別の可否は処方内容と患者の状況により異なります。
関連ガイド
まとめ
処方箋の複数の薬から1種類だけを自己判断で外すことは、通常の分割調剤ではありません。服用したくない理由や残薬、副作用への不安がある場合は薬剤師へ伝え、必要に応じて処方元へ確認してもらいます。制度上の分割調剤は、長期保存が難しい場合、後発医薬品を短期間試す場合、医師が服薬支援のため指示する場合などに行われます。在庫不足による後日受取やリフィル処方箋とも区別し、受取回数、次回日程、処方箋の扱いを薬局で確認しましょう。