
最初に確認したいこと
災害時は、いつもの医療機関や薬局を利用できず、薬の記録や現物を持ち出せないことがあります。避難先で安全に相談するには、現在使っている薬を第三者が確認できる情報が重要です。平時から、お薬手帳、処方内容の控え、薬の一覧などを更新し、本人だけでなく必要に応じて家族も保管場所を把握しておきます。
ただし、災害に備えることは、自己判断で薬を多く確保したり、服用量を減らして残したりすることではありません。薬ごとに保管条件や処方上の管理が異なります。追加の処方、保管場所の分散、持ち出し方法を検討するときは、医師または薬剤師へ相談してください。
平時に残しておく薬の情報
薬の名称、規格、1回量、使用回数、使用する時間、処方した医療機関、調剤した薬局を確認できるようにします。アレルギー、過去に経験した副作用、持病、注射薬や医療機器の使用も、分かる範囲で記録します。市販薬、要指導医薬品、サプリメント、健康食品も併用確認に必要になるため、処方薬と分けずに伝えられるようにします。
紙のお薬手帳を使う場合は、必要なページの控えを別の安全な場所へ保管する方法があります。電子版を使う場合も、端末の電池切れ、通信障害、ログインできない状況を想定し、重要情報を紙でも確認できるようにするかを検討します。個人情報を含むため、写真や控えの保管場所、端末のロック、家族との共有範囲にも注意します。
薬の保管条件を確認する
薬の保管条件は製品ごとに異なります。薬袋、容器、患者向医薬品ガイドなどの指示を確認し、分からない場合は平時に薬剤師へ相談します。冷所保管が必要な薬、凍結を避ける薬、注射薬や医療機器は、停電や移動の影響を受けることがあります。すべての薬を同じ方法で保管できるとは限りません。
厚生労働省「薬局における疾患別対応マニュアル~糖尿病~(令和6年3月)」のPDF 99〜100ページ(冊子内93〜94ページ)は、糖尿病患者と家族の災害対応として、保管環境に留意した医薬品・医療機器の分散保管、使用中の薬のリストやお薬手帳等のコピーの保管を示しています。さらに未使用インスリンについて、停電時は冷蔵庫の扉を可能な限り開けず、保冷剤との接触や近接による凍結に注意するよう説明しています。これは糖尿病・インスリンに関する資料であり、すべての薬へ同じ温度管理を適用する根拠ではありません。
避難先の薬局や医療者へ伝える順番
まず氏名、生年月日、住所など本人確認に必要な情報を伝えます。次に、治療中の病気、現在の薬、最後に使った日時、残っている量、薬が中断している期間を、分かる範囲で説明します。お薬手帳、薬袋、箱、ラベル、処方内容の控え、アプリ画面など、確認できるものがあれば提示します。薬名を曖昧に覚えている場合は断定せず、「色や形しか分からない」「毎朝使っているが名称不明」と伝えます。
アレルギーや副作用歴、妊娠・授乳、透析、インスリン等の注射、抗凝固薬など、対応判断に影響し得る情報も申し出ます。薬を紛失した、濡れた、熱を受けた、電源が止まったなどの状況も重要です。本人が説明できない場合に備え、緊急連絡先やかかりつけ医療機関・薬局の連絡先を記録しておくと確認の助けになります。
電子情報で確認できる範囲
厚生労働省は、災害時にマイナンバーカード、資格確認書、お薬手帳を持参できない場合でも、本人の同意のもと、氏名や住所等から本人を特定し、医療機関や薬局で薬剤情報などを閲覧できる仕組みを案内しています。電子処方箋対応施設で登録された直近情報が確認に役立つ場合もあります。
一方、利用施設の対応状況、登録時期、通信環境、本人確認などの条件があり、常に完全な情報を取得できる保証ではありません。市販薬やサプリメントなど、電子的な処方・調剤情報だけでは把握できないものもあります。電子情報があるから紙の控えや本人からの説明が不要、と決めつけないことが大切です。
処方箋がない場合の注意
令和8年熊本地震について厚生労働省が発出した事務連絡は、被災地の患者について、医師等の受診が困難、または医師等から処方箋の交付を受けることが困難な場合に、必要な処方箋医薬品を販売・授与できるとしています。あわせて、薬剤服用歴、お薬手帳、マイナンバーカード等を活用して服薬情報を確認するよう努めることを示しています。
この取扱いは、同通知が明記する被災地の医薬品等を確保するための一時的な措置です。平時を含め、処方箋がなくてもいつでも同じ薬を受け取れる一般制度ではありません。災害ごとに対象地域や通知内容を確認し、薬局、救護所、医療機関、自治体の案内へ相談してください。医療用麻薬、覚醒剤原料、向精神薬については同通知内でも別の条件が示されています。当サイトは個別の交付可否や代替薬を判断しません。
今すぐ受診・救助を求める場面
呼吸が苦しい、意識がおかしい、強い胸痛、けいれん、重いアレルギー症状など緊急性が疑われる場合は、薬局探しだけで対応せず、地域の救急・救護案内に従います。また、中断すると重大な影響があり得る治療を受けている場合は、自己判断で服用回数や量を変えず、早めに医療者へ伝えます。
避難所や自治体が開設する医療・薬事相談窓口がある場合は、その案内を確認します。通常営業の薬局でも、在庫、通信、停電、スタッフ体制により対応できる内容が変わります。移動前に電話確認できる状況なら、開局状況と必要な持ち物を尋ねます。
平時の準備チェックリスト
- 現在の薬、用法、処方元を確認できる記録がある
- アレルギー、副作用歴、市販薬・サプリメントも記録した
- かかりつけ医療機関・薬局と緊急連絡先を控えた
- 薬ごとの温度・遮光・凍結防止など保管条件を確認した
- 紙と電子のどちらか一方が使えない場合の確認方法を考えた
- 家族が代理で説明する場合の情報共有範囲を決めた
備える薬の量や分散保管の方法は、疾患・薬・処方管理によって異なります。自己判断で処方薬をためたり、服用を変更したりせず、主治医または薬剤師へ相談してください。
関連情報
公式情報
- 厚生労働省「薬局・薬剤師の災害対応」
- 厚生労働省「令和8年熊本地震による災害に伴う医薬品等の取扱いについて」PDF 2〜3ページ
- 厚生労働省「電子処方せん」災害時の情報活用
- 厚生労働省「薬局における疾患別対応マニュアル~糖尿病~(令和6年3月)」PDF 99〜100ページ(冊子内93〜94ページ)
公式情報確認日:2026年9月28日。災害ごとの特別な取扱いは、国・自治体の最新案内を確認してください。
まとめ
災害時に備える中心は、自己判断で薬を増減することではなく、現在の薬と注意事項を確認できる状態にすることです。紙と電子の記録、連絡先、保管条件を平時に整え、避難先では分からない点を推測せずに伝えます。処方箋がない場合の交付や代替は一律ではないため、その時点の公的案内と医療者の確認に従ってください。